社会実装研究
私たちは、開発した1分子計測技術を、基礎研究のステージから社会実装できる技術へと育てることも目指しています。本当に使える技術とは何か、どうすればつくれるのか。検査現場で使える装置を自分たちの手で開発し、医療機関での臨床検体を用いた検証や、企業との共同開発を並行して進めながら、実際の現場との橋渡しに自ら携わることで、その答えを探しています。
検査現場で使える装置の開発
デジタルバイオ分析装置は、市販品が限られ、大型・高価であることや、手作業の多さ、操作の熟練度による結果のばらつきが、検査現場への普及の障壁となっていました。高感度な分析技術を実際の検査に活用するためには、計測性能に加え、操作の簡便さや設置のしやすさ、導入・運用コストも重要です。私たちは、検査現場の声を取り入れながら、マイクロデバイス、光学系、制御ソフトウェア、解析アルゴリズムを一体的に開発し、小型・低コストで、分析工程を自動化した検査システムの実現を目指しています。
これまでに、汎用的な自動分注機を組み込んだ装置を開発し、SATORI法をはじめとするデジタルリキッドバイオプシーの一連の分析工程を半自動化しました(Commun Biol, 2022)。試料や試薬の分注を装置で制御することで、手作業の負担を軽減し、再現性の高い分析につなげています。並行して、広視野蛍光イメージング装置を開発し(Lab Chip, 2023)、光学系と電子制御系を最適化することで、設置面積14 × 22 cm、重量3.7 kgの可搬型検出器へと小型化しました(iScience, 2024)。さらに、この検出器を自動分注機と統合し、熱処理や磁気ビーズによる簡易精製などの前処理から計測までを一台で行える、デスクトップ型の全自動検査装置を開発しました(Cell Rep Phys Sci, 2026)。各工程を一つの装置で連続して実行することで、操作を簡素化し、操作者によらず安定した検査結果が得られるシステムを実現しています。
消耗品についても、低コスト化、汎用性の向上、安定供給に向けた開発を進めています。コンパクトディスクの製造ラインを転用して量産できるポリカーボネート製の開放型マイクロデバイスを開発し、既存の製造基盤を活用した低コストでの生産を可能にしました。また、多様な試料や反応系を導入できる構造により、さまざまなデジタルバイオ分析への応用にも対応しています。試薬では、凍結乾燥によって常温保存を可能にし、保管・輸送の負担を軽減するとともに、冷蔵・冷凍設備のない場所での利用にも対応しました。このように、装置と消耗品の両面から、多様な現場で導入・運用しやすい検査基盤を整えています。今後も、さらなる小型化、性能向上、低コスト化を進め、日本発のデジタルリキッドバイオプシー技術を、世界中の検査現場で広く利用される製品へと発展させていきます。
医療機関・企業との連携
新しい検査法を実用に届けるには、臨床検体での性能評価、多施設での再現性の確認、そして医師や臨床検査技師の方々からのフィードバックに基づく改良が欠かせません。私たちは、さまざまな大学病院や公的研究機関と連携し、臨床検体を用いた性能評価を進めています。
一方、製造、品質管理、薬事対応といった工程は、研究室だけでは担えません。装置・試薬・部材それぞれの分野の企業と連携し、量産や標準化を見据えた開発を進めています。共同研究、技術移転、ベンチャーの設立など、技術の性質に応じた道筋を選びながら、臨床現場から得られる情報と企業の技術力を合わせ、本当に役立つ検査の形を探っています。
私たちの研究活動や技術にご関心をお持ちの研究・医療機関、大学、民間企業の皆さまとの新たな連携も積極的に進めています。共同研究や技術開発、社会実装などにご興味がございましたら、ぜひお気軽にお問い合わせください。